教授からのメッセージMESSAGE

 私たちの生体内には血管のネットワークが隅々にまで張り巡らされており、生命活動の維持に働いています。血管は内皮細胞が管腔状に連なるというシンプルな構造を基本としており、それゆえに生体内で容易に形成され、そして環境に応じて変化します。このような血管の特性は、組織が傷害を受けた際の修復・再生には有利ですが、疾患の進展を促す異常な血管も形成されやすいという不利な側面も同時に持っています。実際に、がんや生活習慣病、感染症など様々な疾患に血管の異常が関与していることは皆さんがご存知の通りです。そのため、生体内で躍動している血管を統御する方法を得ることは、各種疾患を治療するために重要であると言えます。

 私の血管研究は、「血管の美しい構造はどうやってつくられるのだろう?」という興味から始まりました。発生生物学から始まった研究は、血管の再生医学へと続き、今では癌や感染症などの疾患病理学に手を広げています。それらの研究を通して解ったことは、正常血管の「生命活動の基盤」という光を理解することで、異常血管の「疾患発症の足場」という闇に迫ることができるということです。(詳しい研究の内容については、ぜひ、研究概要のページをご覧ください!)

 怪我をすると血管が傷ついて出血する-、血管は血液を介して酸素・栄養分を組織に運搬するための輸送路であることは子供でも知っています。では、血管がどのように作れられるのか-、樹木のように既存の血管から芽が生えて伸長する血管新生が起きていることも容易に想像出来るでしょう。しかしながら、このような「常識」にとらわれすぎると血管の本質に辿り着くことはできません。実験の結果が世間の常識と一致しなかったとき、その瞬間にはチャンスが潜んでいます。生物は予見することができない創造性と不確定性をもっているのです。木戸屋研究室は血管をテーマに、知りたいことを追求する「おもろいサイエンス」にて、医学の常識を打ち破る場所です。“Seize the day”、今を楽しみ、共に時流を作り出しましょう。

木戸屋 浩康

木戸屋 浩康